2014/11/04
奇跡の月



カイン「昇級試験など、ここ数百年意識したことがなかったから、 
何を勉強したらいいのか判らん。
ベリアールに訊くわけにもいかないし・・・。
だいたい、試験の日は、いつなんだ?」



カイン「とりあえず、こっそりと影勉でもするか・・・。
真面目に取り組むのも今更、気恥ずかしいし・・・。」



バァル「カイン。」
カイン「わ!!びっくりした!!
なんだ、アシュトレト公爵のところの薔薇の精か。」


ァル
バァル「アシュトレト公爵からお届けものです。」
カイン「公爵から?」




バァル「試験に役にたつだろうと。
これを全て暗記したら、大丈夫だそうです。」
カイン「・・・・暗記・・・・。」


バァル「カイン、必ず試験に合格して上級になって
できればあの人たち(公爵ズ)よりもレベルアップして
見返してやってください。」
カイン「(そういう目的じゃないんだけどな)
・・・・相変わらず関係が悪いようだな。 お使いありがとう。」



カイン「アシュトレト公爵が私に協力をするとは・・・ありえん・・・。
よっぽどあの教会レストランの仕事を私に振りたいとみた。
確かに”悪魔”にあの場所はよくない。」


カイン「しかし・・・これを全て暗記?そんなこと不可能だ・・・。
頭が痛くなってきたぞ。しかも久々にみた言語だ。
しかし・・・そうも言ってられん。努力はするか・・・。」


ファウスト「おやおや、カイン、お勉強ですか。偉いですね。」
カイン「必死だ。」
ファウスト「試験の日はいつです?」
カイン「・・・・知らん。」


ファウスト「その調子では今日や明日ということではないみたいですね。」
カイン「・・・だといいんだがな。」
ファウスト「魔界返しの刑のほうもまだみたいですね。」
カイン「私がここに居るということは、そういう事だろう。」


ファウスト「それでは私にも協力させてくださいな。」
カイン「・・・・・・ファウスト・・・・。」
ファウスト「この二冊を暗記してみてください。きっと役に立つと思いますよ。
カイン「・・・・暗記・・・・。」


カイン「・・・みんな、どう思っているのだろうな。私のこと。」
ファウスト「大ばか者だと思っていますよ。」
カイン「・・・・・・。」
ファウスト「どちらにせよ、他はどうであれ、自分の信念を曲げないこと。
でも何もなさずに魔界返しにあってしまっては、戻って来れないことも考えること。」

ファウスト「必ず合格してください。ベリアールの為にも、ね。」
カイン「ベリアールの?」
ファウスト「一度話し合ってみたら?」






カイン「ベリアールは私の話など聞かん。心底嫌っているからな。
・・・・ファウストの持ってきたものも全く理解できん。やはり言語がわからん。
いっぺんにはムリだ・・・まずはこちらから攻略してみるか。」





ベルゼビュート「おや、勉強しとるのか。カイン、そんなもの役に立つのか?」
カイン「『諸先輩方』がそういうのだ。」
ベルゼビュート「悪魔のいうことを信じるのか?」
カイン「・・・・そろそろ、独りにしてほしいところだ。勉強ができん。」


ベルゼビュート「魔王がオマエの実力は充分だと言っていたじゃないか。
今オマエに必要なのは、コレじゃないのか?」


ベルゼビュート「聖書」
カイン「・・・・・・・。」


カイン「・・・・・・欲しい!!けど怖くて触れない。
ここへ置いてくれ。」
ベルゼビュート「十字架もいるか?いっぱい持ってるぞ。」
カイン「いや、それは・・・・結構。」



カイン「おまえは生前は神父だったな。」
ベルゼビュート「いかにも。」
カイン「魔物になっても、十字架や聖書は怖くないのか?」
ベルゼビュート「べつに。」
カイン「そのコツを教えて欲しい。」



ベルゼビュート「”元神父”だからだろう。
あとは鍛錬だ。じゃぁな。」






カイン「・・・・聖書・・・・・。確かに興味深い書だ。
だが、悪魔の身の上、怖くて触れないし、今は試験の勉強のほうが先だ。
なぜにこのような魅惑的なものを今、置いていくかな?
気になってしかたがないじゃないか!!」





ベリアール「おや、それは何だい?」
カイン「(・・・ベリアール!!)・・・・見ての通りの聖書だ。」
ベリアール「私へのいやがらせかい?」
カイン「(今の今までいなかったじゃないか!!)そういうわけではない。
ベルゼビュートに貰ったのだ。」


ベリアール「マジメに勉強しているんですねぇ。」
カイン「そりゃするだろう!!」
ベリアール「試験の日、知ってるんですか?」
カイン「・・・・・・・知らん。」
ベリアール「私に訊けばいいのに。」
カイン「・・・・・・・・。」
ベリアール「『後の十三夜』ですよ。」
カイン「・・・・・・・???」



ベリアール「中秋の名月(旧暦8/15)と十三夜(旧暦9/13)は併せてお月見をするのが古くからの習わし。
月の満ち欠けを基準にする旧暦は1年354日。
年を追うごとに日付と季節にズレが生じるため3年にいちど「閏月」を入れて調整するのです。
今年が閏月が挿入される年。」



カイン「それが何か?」
ベリアール「9月のあとに閏9月が入るので暦の上では9/13が2度出現することになります。
2回目の十三夜のことを『後の十三夜』というのです。」
前回、閏9月が挿入されて『後の十三夜』が現れたのは1843年。
そして次にその月が観られるのは2014年。171年ぶりですねぇ。」
カイン「だからそれが何か?」

ベリアール「一晩中お月見が楽しめる特別な奇跡の月の夜ですよ。
そんな夜に試験とは、また気の毒に・・・・。」
カイン「!!!!」


カインは頭の中で暦を開く。
すると・・・・・・


カイン「11/5・・・・・!!明日じゃないか!!」
ベリアール「よくわかりましたね。」



ベリアール「すでに先客があったみたいですが、
私からも参考書をプレゼントしましょう。」
カイン「・・・・・・ベリアール。」



カイン「・・・・・何故?」
ベリアール「おかしなことを訊くのですね。
自分の双影がいつまでたっても”低級”だと私も恥ずかしいのですよ。」
カイン「・・・・・・・。」



ベリアール「まぁ、ぜいぜい頑張ることですね。
時間がないけれども。
それを全て暗記すれば役に立つかと。」
カイン「・・・・・暗記・・・・・。」



カイン「ベリアール・・・。」
ベリアール「礼は要りませんよ。必ず受かってみせなさい。」
カイン「・・・・・・。」





カイン「これを明日の夜までに全て暗記するなんて・・・・!!
全部言語が違うじゃないか!!不可能に近い。
しかし・・・・・・やらねば・・・・。」