2012/03/29
王とは

龍王
「ああ、又人間界に来てしまいました。
どうしてもあの美しい金魚が見たくて。
こんな夜更けなら誰にも遭わず
部屋までたどり着けそうですね。

しかし私は方向音痴・・・・・・。
ここの城を通り抜けなければ、どこがどこやら
さっぱり判らない。
ちょっと通り抜けさせてもらいますよ。」
龍王
「あっ!!!」

サハル
「あっ!!!」
ばったり!!
龍王
「・・・・・・・・・・。(どうしよう!人がいる!
こんな時間に城の敷地内にいることを
なんて言い訳したらいいのでしょうか?!)」

龍王&サハル
「ここでお逢いしたことはどうか内密に!!」


サハル
「えっ?!」

龍王
「えっ?!」
サハル
「・・・・・どうやらそちらも訳ありのようですね・・・。」
(よくみるとどう考えても人間ではなさそうだ。ほっ。)

龍王
「あの・・・・こちらのお城の方ですか?!」

サハル
「ええ。ここの会社に勤めています。」
龍王
「お住まいもこちらですか??」

サハル
「ええ。つい先日まで洞窟住まいだったのですが
こちらの塔の66階に部屋を借りています。
寄っていかれますか?」


サハル
「どちらに住まわれているのですか?
ここの城の方でしょうか?」

龍王
「(あれ?ここのことをあまり知らないのかな。)
いえ・・・・・・あのっ・・・あのっ・・・・。」

サハル
「????」

龍王
「(誤魔化そうとすると余計に怪しくなってしまう。
ここは正直に全て包み隠さず話してみよう。)」
龍王
「あのー・・・・・龍宮城から来ました。」

サハル
「ということは・・・そのお姿から察するに・・・・
貴方は龍神様?!
(宵宮書庫の書物で読んだことがある)」

龍王
「あーーーっ!!はいっ!!
そのとおりです。お恥ずかしい・・・・。」
龍王
「いえ・・・・用事が・・・。
あの・・・この城にではないんですが・・・。
(いや、それでは此処にいる私は不審だな・・・・
でも事実だし・・・。)えっと・・・えっと・・・・・。」

サハル
「そちらは?」

龍王
「はい?」
サハル
「話には聞いたことがあったが、本物の
龍神様に逢えるとは。私はラッキーだな。」

龍王
「いえ・・・・あのー・・・・・
そちらも、リッパな角をお持ちで・・・・
やんごとなきご身分の方のご様子・・・・。」

サハル
「あー・・・・・あの・・・・それは・・・・・。」
サハル
「実は・・・・
『魔王』・・・・なのです・・・・。」

龍王
「あ・・・・魔王様で?」

サハル
「いや、王だなんてお恥ずかしい限りですよ。
つい先日まで『ただの魔物』だったもので。」

サハル
「私は魔王でそちらは龍王で龍神様・・・・か。」

龍王
「はい・・・・・そのとおりで・・・・・。」

サハル
「なんとなく似たもの同士に思えるのは
私だけか?(立場とか角とかゴツい手とか
『王』であることがちょっと気恥ずかしいところとか)」

龍王
「ええ。私もそんな感じが・・・・。
いえっ!!魔王様と類トモだなんて恐れ多い・・・。」
サハル
「貴方にはご主人様は?」

龍王
「いいえ。私が主なので。」

サハル
「やはり偉い方なのですね!!」

龍王
「いいえ。これはまた恥ずかしい・・・・。」
龍王
「龍宮城の主であるのは生まれた時からの定め。
このポジションの所為で友ができない・・・。」

サハル
「何故?」

龍王
龍神様というだけで近寄りがたいのでは
ないかな・・・・。」

サハル
「いや、それはどうかな。」

龍王
「・・・というのは?」
サハル
「友ができぬのは・・・・
原因は貴方自身にあるのではないかな?」

龍王
「!!」

サハル
「さて、何故にこのような時間に
龍神様が此処にいらっしゃるのでしょう?」

龍王
「ああ・・・・・実は美しい金魚を観にいくため
この城を通り抜けさせてもらいたかったのです。」

サハル
「美しい金魚??それはそれは!
一体どこにいるのですか?」

龍王
「この先、しばらく行ったところにある
アパートの一室なんです。
でもコッソリと観て帰るだけ・・・なのですが。」
龍王
「あのーあのー・・・・・・・
(どうしよう・・・一緒にいきませんか?って
誘ってもいいかな?そしたら友達になれるかな?
ああ、でも名前も知らないのに・・・どうしよう・・・・)」

サハル
「どうぞ!!」



龍王
「・・・・・・一緒に観にいきませんか?」

サハル
「ええ!是非。
私の名前はサハルです。」

龍王
「サハルさん・・・・・。
本当に美しい金魚なのですよ。」

サハル
「それは楽しみだな。」
サハル
「・・・・・・・・・・。
(角を持つ魔王の姿の時に誰かに会うなんて!!

・・・こんな時間だ。人間客ではあるまいな!!

人間社会では私の素性は隠すよう
ご主人様からの命令なのだ!)」
龍王
「ああ・・・・私も龍神
だなんて・・・・
とても人には言えないんですよね。
しかも名が龍の王と書いて龍王・・・・
これがまた大袈裟で恥ずかしい・・・・。」
そちらは龍神様ではないですか!!
サハル
「立場や境遇の所為もあるかもしれないけど、
本当の理由は、貴方自身がご自分が龍神様であることを
恥じているからではないのかと思って・・・・・・・

だから引っ込み思案にもなるし、いまひとつ積極性に
欠けてしまう・・・

もっと自分のことを認めて、好きになればいいのに。
いや!初対面の方に言うことではなかったか。
失礼・・・・・。」

龍王
「いえ!!目から鱗です。有難うございます。」
龍王
「え!!!」

サハル
「すみません。読心ができるもので・・・
躊躇されなくても大丈夫ですよ。」

龍王
「あ・・・・。」
単純っていいなぁ