2011/09/12
魔法使いは誰?

ルネ
「あのー、ファウストさん、よろしいでしょうか?」

ファウスト
「こんな夜更けに誰かと思えば、
ルネぴょんじゃありませんか。

ええ。どうぞ。歓迎します。
今宵は満月。中秋の名月ですよ。
狼が牙をむいたりしてね。」

ファウスト
「その細い脚でこの塔を上って来たのですね?
135階まで。階段で?」

ルネ
「ええ・・・キツかったです。」

ファウスト
「それはご苦労様。でも息が切れてないですよ。」

ルネ
「私、心臓とまってますから・・・・。
ファウストさん、香水キツすぎます。」
ファウスト
「わざわざここまで
私を訪ねてくるとは。
それほどに重要な用件ってことですね。」

ルネ
「はい・・・。」

ファウスト
「聞きましょう。どうぞ。」

ルネ
「実は・・・この塔の4階にある私の実験室で
私の留守中に何やら儀式が執り行われた
らしくて・・・・。」

ファウスト
「儀式?」

ルネ
「ええ・・・おそらく魔物召喚の。」
ルネ
「そして、それは成功してしまったみたいなのです。
しかし、どういうわけか・・・そのまま放置されていて。」

ファウスト
「魔物が?」

ルネ
「はい・・・。」
ファウスト
「・・・・・それで?私に何を求めているのでしょう?
どうして私のところへ来たのですか?」

ルネ
「貴方になら相談できそうだと思ったので。
・・・・・・送り返す方法を教えて欲しいのです。」

ファウスト
「せっかく召喚したのに?」

ルネ
「はい。」
ファウスト
「・・・・・ふふ・・・・
騙されては、いけませんよ。」
ファウスト
「そもそも、魔術なんて人の想像力に過ぎないのですよ。
天使も悪魔も、その存在も含めて、ね。」
ルネ
「・・・・・・・・・では、どうして貴方たちが
存在するのですか?」

ファウスト
「人の『想像力』とは果てしないパワーの源。
『意思』がそのパワーに『方向付け』をしたときに
人は『願う』ことを始める。

すると、人の魂は宇宙に向かって開け、
人間の精神と肉体を通じて宇宙のエネルギーを
受け入れ始める。

そのエネルギーを受けて、人間は『覚醒』してゆく。
宇宙的な意識が自分の中に広がる、
・・・それが人間が執り行う『魔術』のからくりです。

宇宙のエネルギーとは俗に言う天使とか悪魔の
ことですよ。」

ルネ
「天使も悪魔も人間の想像上の産物
に過ぎないのだと?」

ファウスト
「人間にとっては、ね。
誰にだってできる『自己を知る』ための『術』ですよ。
そう思っておいてもらうほうが我々も
やりやすいから。ふふ。」

ルネ
「ただ・・・・ここに『在る』のも事実です。」

ファウスト
「ええ。覚醒した人間にしか見えない世界なのかも
しれませんね。」
ルネ
「私が覚醒しているかどうかなんて判らないけど、
何者かが呼び出してしまった魔物はちゃんと
見えるんです。いいえ、実在しています。」

ファウスト
「・・・・・・・・・・そう。」

ルネ
「実験室まで来てください!!」

ファウスト
「私に指図を?」

ルネ
「お願いしているんです!!」
ファウスト
「ルネぴょん・・・?
それなりの代償は支払えるのかなぁ??」

ルネ
「・・・・・すみません。仕事中なので。」
ファウスト
「ルネぴょんは、可愛いですね。
残念ながら人のものには手を出さない主義です。
それに貴方が死人返りなのは知っています。
人間ではない。オマケに断わるのも上手。
でも私の機嫌も損ねない。賢いですね。」

ルネ
「・・・・・ええ。
私はとうにこの世のものではないんです。」


ファウスト
「おやまぁ・・・・・・これは・・・・・。」

ファウスト
「こまったねぇ。
・・・・・・・人間の仕業じゃありませんよ。」

ファウスト
「くすくすくす・・・・・・・真面目ですねぇ、ルネぴょんは。
さっきの話は、からかって見ただけです。
魔の者の真実を知る者が少なくなってきましたからね。
我々は存在します。ルネぴょんも含めてね。」

ルネ
(相変わらずやりにくいなぁ・・・・この人は・・・・)


ファウスト
「どうしたの? どうぞ。」

ルネ
「あの・・・・お隣だと緊張するので。」

ファウスト
「じゃあ私の膝の上でもいいですよ。」

ルネ
「いえ・・・やはりお隣に。
(各種ハラスメントの香り・・・)」

(えっ・・・隣に・・?)
全 否 定
ファウスト
「聞きたい?」

ルネ
「え・・・・・ええ。聞きたいです。」
ファウスト
「それでは『取引』を。」

ルネ
「・・・・・他と契約しているので無理です。」

ファウスト
「・・・・・・・・・・そう。」

ルネ
「でも『約束』ならできます。
あの魔物を何とかしてくださるなら。」

ファウスト
「私の言いなりに?」

ルネ
「いいえ、でも少しぐらいは。」
ファウスト
「さあ、いきましょう。
人間のお遊びで何が出たかなぁ?」

ルネ
(これから階段を131階降りるのか・・・・。
・・・・・・この人と一緒に・・・・。)
ルネ
「それは私が悪魔と契約したから。
そして天使に祝福されたから。

だから天使も悪魔も実在する。
でなければ・・・・私もここには存在しないはず。」

ファウスト
「ふーん。」

塔 4階 ルネの実験室