2011/04/26
天使という名の怪異

ホタル
「トキがよこしてくれた式だが
いつ見ても、なんとはなく
気味が悪いのう・・・。

此方の世界に女子が
不足しているとはいえ・・・」

呉春
「ホタル様、呉春は精霊ですが、
人との会話は成立するのですよ。」

ホタル
「ああ、それは失礼。
思わぬ失言をしてしまったようじゃ。」

ホタル
「しかし・・・・
いつもようやく見慣れた頃には
酒が終わってしまい
其方も消えてしまうからのう。」

呉春
「それでは、早う見慣れてくださいましな。」

ホタル
「しかし人ではないとなると・・・。」

呉春
「鬼よりはマシでしょうよ。」

ホタル
「トキは鬼でも平気で使役するからのう。
あの蛇の妖女はきっと鬼だと思うのじゃ。」

呉春
「私の前で、別の女子のお話を?
それは憎らしい。」

ホタル
「ああ、しまった。また失言じゃ。」

呉春
「ホタル様は『恋』が趣味だったはず・・・
しかし、とてもそうは思えませぬ。」

ホタル
「相手が精霊となると調子が狂うのじゃ。」

呉春
「呉春は女子ではないとゆうのか?」

ホタル
「・・・・また失言じゃ。」

ホタル
「私の気持ちがあまりにも臥しておったので、
トキが気を効かせて
打出*などしてくれておったが
あそこに本当に人がいるのではないかと考えると
実は全部『鬼』ではないかと思えて、気色悪うてのう。」

呉春
「相当、病んでおられまする・・・。
それでは、ホタル様が私めに打ち解けられるよう
楽しいお話でもいたしましょう。」

ホタル
「ほう。」

呉春
「先日、トキ殿のご下命を拝して
室礼*を春仕様にかえておりましたところ」

ホタル
「何か出たのか?」

呉春
「はい。几帳台の布を除けると、
とあるものがぶら下がっておりました。」

ホタル
「ぶら下がっておったとな?」

呉春
「はい。」

呉春
「あまりに、綺麗でしたが、それでも珍妙な
姿をしておりましたゆえ、私は怖うなって
トキ殿を呼びにいきました。」

ホタル
「戻って来たときにはいなくなっていたのじゃな?」

呉春
「いいえ、そのまま、ぶら下がっておりました。」

ホタル
「・・・・・・トキはなんと?」

呉春
「名前を訊いておりました。」

ホタル
「ほう・・・・・。
それで、名はなんと?」


呉春
「『天使』だと。」

ホタル
「・・・・・・
天子*??(・・・・・帝?)」

呉春
「はい。『天使』だと。」

呉春
「相手は賢く、それ以上を口にはしませんでしたが・・・
どう見ても天使には見えぬ姿・・・。」

ホタル
「それはそうよ。(・・・しかし何故に帝がトキの几帳台に
ぶら下がっていらっしゃる?怪異か?)」


呉春
「またそれは、この世のものとは思えないような
綺麗な青色で、あまりの見事さにしばし2人で
見入っておりました。
全裸かと思えば腰巻をしておりました。」

ホタル
「・・・・・・あお?(帝が・・・青く?・・・・全裸?!)
いや、その前に・・・帝の事を『とあるもの』だとか
『それ』などと言ってはいかん。」

呉春
「はて?帝?」

呉春
「おや・・・・・残念。
酒もそろそろ終盤に。
私は消えなければなりませぬ。

逆さ吊りの天使のお話はまたいずれ・・・。

楽しい時間を有り難うございました。」

ホタル
「おお・・・・・呉春よ。
打ち解ける前に酒の姿に戻って
しもうた・・・・。」

ホタル
「重要なことを聞けなかったではないか。
殿上人としては気になるぞ・・・・。

さて、恐れずトキの家を見に参ろうか・・・・。」

*1
打出 :(うちいで)御簾(みす)の下から女房装束の袖口の重ね色目を見せて、華やかさを演出する装飾のこと。
着飾った女房が並んでいるように見えるが、本当は、重ねた装束を几帳(きちょう)の柱を支えにして、
人が着ているように形作って置いたもの。みせかけの女房たち。(笑)
*3
天子:(てんし)とは中国や日本で用いられた君主の称号。国王、皇帝、天皇などの別号として用いられる。
ホタルには西洋の「天使」の概念がない。(笑)
*2
室礼:(しつらい)平安時代の住まいに於いて、屋内に間仕切りをして、さらに几帳(きちょう)・屏風・衝立(ついたて)障子・
帳台で隔て、さまざまな箱などの調度を設け整える、あるいは飾りつけること、それを室礼(しつらい)とよんだ。
衣服と同じく室礼も時節に合わせて夏物、冬物と装いを改めた。
<トキのちょっと平安辞典>

全裸の帝?

青い姿の帝?

どういうわけか
几帳台にぶらさがっている帝

しかも逆さま・・・・・・・?